お疲れ様です。
電験を徹底的に研究している桜庭裕介です。
今日は「電験1次試験申込から超勉強して、4科目同時合格を達成した時の話」をします。いわゆる「電験体験談」をお伝えします。
電験3種や電験2種を受験する人にとっても、役立つ情報だと思います。
その前に、簡単な自己紹介をしておきます。
【2020年5月11日時点】
・電験1種の過去問を約40年間
・電験2種の過去問を約40年間
・電験3種の過去問を約20年間
を徹底的に分析し役立つ記事を書いていたり、実際に勉強を教えたりしている。今は主にオンラインで教えています。
⇒相談はこちらからどうぞ(勉強相談依頼ページ)
そんなこともあって、今年の試験問題をかなり的中させることができました。来年の準備をしつつ、電験二次試験プロジェクト、電験3種の要点を掴むプロジェクトの運営、雑誌連載、転職電子書籍作成、教科書作成を今は頑張っています。
今は「電験オタク」と言われることもありますが、試験申し込みをした当時、電験の知識がほぼ消え去っている状態からのスタートでした。
そんな人間がどうやって、一次試験4科目合格を実現させたのかを読んで頂ければと思います。
急に変われるような魔法はなく、膨大な時間投入という力技です。
本題に入ります。
【改定履歴】
⑥2020年5月16日追記記事「電験3種に必要な勉強時間を本気で考察してみないか?」のURLを追加
約2ヶ月で4科目を合格ラインに乗せた実体験談
申し込みから試験日まで「何を使って、どう勉強して合格したか」をこの記事で伝えていく。
電験の申込締切 6月中旬。
電験の試験日 9月初旬。
これは不変なものである。
その間には「ボーナスの支給」「夏祭り」「お盆」といったイベントがあって、非常に忙しい時期だ。
これから勉強を始めるといった方は
・どうやって勉強していけばいいのだろうか
・どの程度勉強すればいいのか
といった疑問を高確率で持つと思う。
今回の記事は、そういった方の参考になる記事となっている。
※前回記事では「重要なポイント」をお伝えした。この記事を読み終えてから読んでもよいし、できれば事前に読んでおいてもらいたい。
「重要ポイント」から知りたい方はこちらからどうぞ。
3ヶ月の道のりは「地獄」
はっきり言って「物凄い大変」「ほぼ地獄」だった。
電験1種の一次試験だからということもあったが、それはもう悲惨なものであった。
スケジュールを見て欲しい。
多少の変動があったが、平日はこのスケジュールで動いた。
別記事「【電験一発合格を狙う】1日何時間勉強すればいいのか?? - 電気主任技術者試験完全攻略」でも紹介したが
勉強する内容を細かく分割し、勉強資料は常に持ち歩くようにしていたので、仕事の休憩時間や待ち時間でも復習をするようにしていた。
こうして1日10時間の勉強時間を確保した。しかしながら、電験申込から試験日までは約90日しかない。
10時間×90日=900時間
休日は約25日としても、プラス250時間
かなり多く見積もっても1150時間しかないのだ。
一応、電気のバックグランドはあったものの、申込時点の自分は電気の知識をほぼ忘れており、テブナンの定理すら覚えていない状態であった。
当然、3種の問題すらも解けなかった。
膨大なやるべき事と仕事とのせめぎ合いで当然寝る時間すら確保することが厳しくなってしまった。
200時間ちょっとであの難しい問題を解けるようにならないといけないのだ。(1科目300ページもある参考書を理解するだけでも50時間は欲しいだろう。)
電験に共通すること
電験は何種であろうと、4科目合格するためには共通することがある。
※当然、3種よりも2種、1種の方が難しい。(3種と2種の一次試験のレベル差は電力と機械についてはあまりない。)
しかしながら、やる作業としては基本的に変わらないので、スケジュールはほぼ似る。
勉強の流れを大きく区分けすると
①基礎を押さえる
②基礎に肉付けをしていく
これを試験に応じたレベルで積み重ねていくこととなる。
全体のスケジュール
1日のスケジュールは分かったと思うので、次に全体スケジュールを見ていこう。
分かりやすいように図にしてみた。約90日間の全体スケジュールである。
この全体スケジュールの図を基に簡単に説明していく。
5月から6月中旬に取り組んだ事
5月~6月中旬までに一気に基礎を押さえにかかった。
基礎がないとそもそも電験1種の過去問の解説を見てもよく分からない。特に理論科目は「ん?」「なんでこうなるんだ?」の連発だった。
知識の根本から理解しないといけないことに気が付いた。高専時代のノートや解いた問題が役立ちもしたが、なにぶんしっかりとまとまっていないのでベースとなる資料を見つけるべきだと考えた。
それが電験3種用テキストだったわけだ。このテキストは4科目が一冊になっているので内容が少し薄かったのでネット学習も取り入れて知識の補填を行った。
6月中旬から7月中旬に取り組んだ事
基礎が身に付いたので、電験1種の過去問を解きにかかった。王道の過去問戦法である。しかし、結論から言うと「この戦法は通用しなかった」のである。
ボイラー技士や危険物取扱者の資格試験とは話が違ったのである。(これはくれぐれもディスっているのではない。むしろ危険物やボイラーの方が好きである。電験は重箱の隅をつつく問題が多すぎる)
理論科目が決定打になった。そもそも電験3種の計算問題が解けないようだと、まず電験1種の問題が解けないということを再認識したのである。
一方で、この視点で試験を見たことで「電験2種1種の機械科目は電験3種の試験問題にかなり似ている事に気が付いた」のである。
電験3種と2種の過去問を解くことで、知識量を増やすことで試験本番でのイレギュラーに対抗もできて正答率も上がるし、1種の過去問を理解するスピードアップになることにも気が付くことができた。
7月中旬から8月中旬に取り組んだ事
ここからは乱打戦になった。とにかく電験1種の過去問題集と向き合い続けた。電験2種3種の知識をインプットしたこともあって、1種の問題集を見ても全く知らないということはなくなった。(理解できないのはあったが)(横軸同期インピーダンスや縦軸同期インピーダンスは正直今でも自信がない。)
ただ機械科目は苦手だった。4科目1冊の参考書には詳しいことが書いてなかったし、試験問題に対抗できるまでのバリエーションが含まれていなかったからだ。
機械科目の参考書を一冊投入して、もう一回「誘導機」「同期機」の理解をすることにしたのである。この工夫があって機械科目は安定して点が取れるようになった。
電験三種を受験される方へ
電験三種を受験される方は電験1種の勉強をする必要はないのでもう少し楽なスケジュールになる。
ただ、電験2種の過去問まではやっておいた方がいい。これはマストではなく、ベターである。当然、3種の勉強が終わっていないのに2種の勉強をしてしまうのは本末転倒なので強要はしない。
やっておいた方が良い理由だが「電験3種の問題の中には過去に電験2種で出題された問題も存在する」ためだ。特に電力科目や機械科目は参考になるはず。
電験3種を受験する方にスケジュール以外の注意事項も伝えておきたい。
【注意】使用する参考書に気を付けろ
今回話に出てきた参考書「電験3種の基礎徹底マスター」は確かに使いやすい。だが、あくまで基礎が学びやすいだけであって、この1冊だけでは「合格できない」という点を押さえておく必要がある。
この参考書を否定するつもりはないが、用途を知っておいて欲しいということ。広く浅く学べる資料は重要だし、仕事でも使える。
広く学べる資料は正しく使えば「頭の中に電験の知識を植えていく下地を作り出すこと」もできる。何もないところにいきなり種をまいても花は咲かない。いきなり難し過去問を解き出すのはこの行為に近い。
土台を作っておくこと、基礎を作っておくことは、後々役に立つ。
今回の自分の実体験の場合だと、電験2種の「過去問を解く」段階で役立った。電験3種でもこれは同じことが言えるだろう。
基礎ができていなければ、過去問を解く際に必ずつまづく。解く度に躓くと楽しくない。ここの挫折を避けるためにも事前に準備しておくと良い。
自分自身が勉強していて楽しいと感じる勉強スタイルは勉強時間を増やすことができるぞ。
使用する問題集のポイント
自分は問題集と参考書を大量の持っている。タンス1段に入りきるか否かの量だ。使いにくい参考書や問題集、合格に直結しないものは途中で使うのをやめている。
それらはスケジュールに記載していない。
ここで、自分が伝えたいことは2つ。
①問題集、参考書の中には確実に「使えるもの」「使えないもの」が存在する
②問題集と参考書はモノによって使用用途が異なる
問題集の解説
ここまでで「試験勉強のスケジュール感」「問題集と参考書の用途が大事」ということをお伝えした。
実際、自分が使用した問題集と参考書について、詳細解説をしていきます。
合いそうだなと思うものがあれば、活用して頂ければと思いますし、既に参考書を持っている方は代用できるかを検証してもらえればと思います。
1.電験三種を目指す人のための基礎徹底マスター
4科目の基礎をサッと学習することができるのがこの本のメリット。
2週間ぐらいで概要を掴むことができるので、最初の読み物としていい。
左のページは単元のまとめ、右ページは簡単な問題といった形式となっている。
また、図も多いので理解しやすい。「機械科目」が分かりやすくまとめられていた。もう少し深い問題が解けるように内容を充実していたら良かったと思う。機械科目のページだけ切り取って、ポケットに入れ、仕事場にも持ち運んでいた。
理論科目をこの参考書だけで点を取るというのは正直厳しい。公式や内容をザッと把握するという使い方で使用すると良いだろう。
2.電験第3種模範解答集
電験3種合格に直結する問題集。電気書院から出版されている過去問題の解説集だ。
自分は必須級だと考えている。
某電力会社、メーカーの図書施設にはこの問題集がギッシリ並んでいたのを見て驚いた。
それだけ使える資料ということだ。解説が詳細に書いてあるので、読むだけでずいぶんと勉強になるだろう。この解説から出題されることが多々ある。
電験は10年前ぐらいの問題が再出題される傾向があるので、平成20年ぐらいの問題は押さえておくこと。
表紙の「平成25年版」は「平成20年~24年までを収録」といった意味だ。このあたりを押さえておくといい。
また、たとえ電験2種1種を受ける方であっても、基礎に自信がない方は電験三種の問題を解いておくことをオススメする。
一見、遠回りに見えるが、そんなことはない。電験1種2種の問題集を解き始めると、分かって頂けると思う。
3.電験第2種模範解答集
「電験3種の問題集には記載されていない解説」が多いのが特徴。(機械科目は大体似ている)
また、電験3種に新しく出題される問題の多くが電験2種からの使いまわしであることが多いので、やっておいて損はない。(もし、試験センターから連絡が来たら、上記の二行は即削除するつもりだ。ただ事実ではある。)
【注意事項】
電験2種に挑戦する方は、上記の5年間だけでは知識が不足することを認識しておいて欲しい。あと5年分は解いて、計10年間分の知識を習得すること。
現に自分の職場の知人は昨年二種を合格したが、一昨年は不合格だった。
その一番の理由は「インプット量不足」にあった。
試験本番で全く知らない問題に出会ってしまったら、正解できる確率はかなり低いと思っておいた方がいい。今年受験する方は、平成10年から20年の問題も押さえておくことを強くオススメする。一次試験の合格確率がグッと高まる。
もし、二次試験も今年合格するつもりならば、合計10年分やっておくと固い。
「平成15年~平成19年の問題」
ここからは電験2種1種を受験する方のための問題集。
電験2種以上を受験する方を対象にした問題集である。
※電験3種受験予定の方もこれらを活用してもいいが、それよりも3種の過去問と2種の過去問をがっつりやった方が合格率は高まる。内容がマニアックすぎる。
4.電験1種 一次試験の徹底研究
単元毎に過去問を整理、解説してくれているのですごく便利。
理論で言えば
「回路計算」「電磁界」
電力で言えば
「水力発電」「火力発電」「送電」「変電」
といったように、過去の問題をジャンル別にまとめてくれているのだ。
1種の一次試験はやはり難しい。
50点ぐらいまでは取れるようになる。
だが、合格点までのあと10点が遠い。この10点を取るためには難易度が高い問題を解けるようにならなくてはいけない。
5.電験第1種模範解答集
「平成11年~平成20年の問題」
自分はこのオレンジの模範解答集を計5冊持っている。
7月中旬から8月中旬に至るまで2冊解いた。さらに試験日までにもう1冊解いた。(解説は読み切ることができなかった)
電験1種の問題を初めて解いた時、勉強を続けてきた成果もあり、どの年度でも電力科目と法規科目は安定して7割ぐらい取れた。
理論科目は6割ぐらいの出来だった。不合格の年度もあった。
ただ、電験3種と2種の問題集を経験していたので、どの年度でも「電磁気」「電気回路」は点が取れたのは大きかったと思う。
しかし、機械科目がどうしても苦手だった。誘導電動機、直流電動機、同期機の計算ができなかったのである。そのため、機械だけに特化した問題集を1冊追加購入し、計算問題に慣れることにした。
6.みんなが欲しかった!電験三種 機械の教科書&問題集
※これは昨年出版されたもので、現在教える用に使用している。
(なお、試験当時に使っていたのは「電験三種受験テキスト 機械」というものだ。)
感想としては「かなり学びやすい」
機械科目を知るにはもってこいの資料だ。
とにかく図が有り難い。記憶を呼び起こす為にも使える。
勉強当初、機械科目は訳が分からないと思う。この1冊があれば、間違いなく、自分は楽できたと思う。
「電験3種」を完全に攻略する資料が欲しい
自分および他者の経験・失敗を踏まえて、一冊の資料にまとめた。
電験は8月後半、とにかく時間との勝負になる。
「何をして」「何をしないか」といった優先順位の話をまとめてあるものだ。
①これから電験の勉強を開始する方
②電験の勉強が上手くいっていない方
③どう考えても時間が足りない方
指針とする支えがなければ、合格の為に読んで頂ければと思う。
電験問題集&参考書を選ぶポイントを下記の記事にまとめた。一読するだけで考え方が抜本的に変わるだろう。「なぜ、不合格になる人と合格になる人が分かれるか」が分かるだろう。
電験問題集&参考書の選び方の教科書【結論:選定基準が大事】 - 電験合格からやりたい仕事に就く
試験直前チェックシートで抜けを無くす
試験で実力以上の力を発揮するためには「今までの復習」が極めて重要になります。致命傷になる勉強の抜けは極力減らしましょう。
まとめ
電験3種、電験2種1種1次試験を突破するために必要な情報をかなり入れました。
どのようにスケジュールを組み、どのぐらい勉強すればいいか、ぼんやりイメージできるようになって頂けただろうか。
重要な部分をまとめますと
・基礎を身に付ける期間を必ず設ける。
・次に、問題に挑戦する。
・そして、解説を読み、意味を理解する。
・解くべき問題数は3種⇒2種⇒1種の順に増えていく
・苦手科目があるなら、試験直前でも追加で勉強する
これらを守ることができれば、4科目合格することができます。(自分は根性しか取柄がないので、能力が高い方はほぼ実現可能だと思います。)
【2020年5月16日追記】
機会があって「電験3種の勉強時間を詳細考察した記事」を作成しました。せっかくなので共有しておきます。一緒に考えてみて自分なりの目安を作ってもらえれば役立つと思います。
あとがき
①在宅勤務をしている方へ
在宅勤務をしている期間中に明らかに成長を遂げている人がいます。遅れを取らないように自分なりの努力をしていきましょう!工夫をまとめました。
■在宅勤務をしている人に読んで欲しい記事■
②電験講座を考えている方へ
結局、どうなんだ!?と思い、最新資料を調査してみました。電験の通信講座が気になっているといった方に役立つ情報が含まれています。
■電験講座を考察■
【更新履歴】
⑤2019年9月16日追記
④2019年8月18日追記
試験直前チェックシートを追加
③2019年7月26日追記
文章追記
②2019年7月7日追記
スマートニュースおよびGoolgeオススメ記事に掲載されました。非常に嬉しく思います。今後も後世にいい記事を残せるように頑張ります。(日頃、コメントを下さる皆さまのおかげです。本当にありがとうございます。)
①2019年5月28日追記
問い合わせもあったので、分かりやすいように問題集の解説をがっつり書きました。1000文字以上追記したので、参考になることを願っています。誰でも分かるよう、認識違いで損をしないような解説になっています。