【2020年2月追記】「コロナ放電」「部分放電」「水トリ―現象」「絶縁破壊」というワードを徹底解説していきます。電験においても出題されるワードであることから、絶対理解しておいて欲しいです。
おはようございます。
電験と電気業界を研究している桜庭裕介です。
簡単な自己紹介をしておきます。
❑電験研究歴❏
トータル100年分の過去問を分析しています。
・電験1種 40年分
・電験2種 40年分
・電験3種 20年分
≪実績≫
❑電験3種関係❑【電験|電力(水力発電)】水車まわりの記事がそのまま試験に出題されました
❑電験2種関係❑電験2種|機械【結論:ポイントを押さえて選択肢を減らす攻略法は有効だった】
❑TOEIC❑
電気エンジニアTOEIC攻略までの道のり【800点までは取れた】
❑雑誌連載❑理論の超入門(雑誌『新電気』オーム社連載)
この記事では、混乱しやすいワードを分かりやすく解説します。
コロナ放電から絶縁破壊までの話
まず、この現象を細かくお話する前に、読者が気にされている
「電験に出るのか出ないのか」
という疑問に答えていきます。
答えを言うと
・電験3種
・電験2種一次・二次
・電験1種一次・二次
全試験で出題されます。
3種だと変形されて出題されますが、2種1種では比較的に丸々出題されがち。
まさに「狙い球」と言えるでしょう。
ちなみに、絶対に打ち損なわないこと。(他の問題が難しいので)
コロナ放電=部分放電
勘違いしている人が多いので、冒頭に明確に書いておく。
「コロナ放電」「部分放電」という言葉
この2つの言葉に「違いはない」。
ここで混乱する必要は全くない。
コロナ放電を調べるとCVケーブルが検索される理由
ここが答えられるようになると、よく理解していると言えるだろう。
今日の記事を読んで、即答できるようになって欲しい。
最終地点はここだ。
はじめに
まず「部分放電とは何か」といった話からしたいと思う。
部分放電は電気の仕事をしている方にとっては、とても身近な用語である。
部分放電の定義から見ていこう。
「気体内で二電極間の電圧を高めたとき,電極間の電場が一様でない場合に火花放電が起こる前に現れる発光放電」
「電極の先端など電場の強い部分付近の気体が電離し,局部的に電流が流れ発光する現象」(コロナは陽極では低電圧で電極をつつむ膜状(グロー放電),火花電圧に近づくにつれて明滅する樹枝状(ブラシ放電)となる。)
「気体中の放電の一形態で金属電極突端などに生ずる局部的な放電」
❑備えておくべき知識❑
・電極間に電圧を加えていくと,まずコロナ放電が発生し電圧の上昇とともにこれが発達して電極間を結ぶ火花放電に至る場合と,コロナを経由せずに直ちに火花が発生する場合がある。
・一般に電極近くの電界が強く電極から離れると弱くなる不平等電界の場合にコロナが発生する。
・空気の絶縁耐力は30kV/cm
・気圧が下がるほどコロナは発生しやすい。大気の関係から。
❑豆知識❑
・コロナは冠(crown)と同義語で電極に冠をつけた形,あるいは太陽のコロナとの類似から名付けられた。
ちなみに上記の内容は、論文や企業研究の文献の中でも特に分かりやすい文を引用したものである。
これらを要約すると、「部分」という言葉の通り「局部的な放電」だということだ。
その原因は「電界の集中」にあるということも覚えておくと良いだろう。
コロナ放電の何が悪いのか
それでは「コロナ放電がどんな影響があって、嫌われているか」を説明していく。
部分放電は、尖った部分に発生しやすい。電界が集中するからだ。そのため、素材にくぼみのようなものが形成されると、そこの角に放電が集中するので、より放電が起こりやすい環境になる。
つまり、素材に傷があったりすると、くぼみの先端の電界が高まりやすいので部分的な放電に注意しなくてはいけないのだ。
ここまでの説明で
「部分放電の起こる原因」は理解して頂けたと思う。
極力ムダな表現を削っているからスッと頭に入っただろう。
ではいよいよ本題の「部分放電がどんな影響をもたらすのか」を考えてみよう。
これは、知られていることのようで、意外に知られていない知識だ。
部分放電が一度発生しただけであれば、あまり影響がないことが多い。
だが、繰り返し起こるコロナ放電は徐々に素材を蝕む。
①イオン及びイオンの衝突が加熱、腐食、化学反応(重合・ひび割れ・気化)を引き起こす
②イオン化された気体中で新たな化合物が発生させる
③紫外線または軟X線を発生させる
といった影響がある。
しかも、部分放電というのは一度発生すれば、繰り返し起こる現象。それが故に、素材の表面に傷を作ってしまうことが多々あるのだ。
部分放電は絶縁物に水トリ―を引き起こす?!
絶縁物に傷が入った場合、絶縁物の破損は簡単に起こる。
樹枝状(トリー状)の絶縁破壊が発生してしまうことをここで学んで欲しい。
いったんトリー(樹枝状の破壊痕跡)が発生すると、そこに空気層が出来てしまうので、そこにも部分放電が発生し、絶縁のヒビはどんどん深くなっていく。
この図が分かりやすい。
最終的には絶縁の役割を果たすことができなくなり
「短絡」「地絡」
といった現象に繋がってしまう。
ネット上で、電動機のトラブルを検索するだけでも無数に挙がってくる。
絶縁破壊のトラブル
昔は、電動機の絶縁診断をしていなかった。
絶縁診断が注目されたのは、トラブルがきっかけだった。
電動機メーカーでは有名なトラブルとしては「相間短絡」だろう。
誘導電動機の固定子スロットのくさびの押さえ付けが弱くて、ワニス(絶縁材)が抜け出し、ムラが生じたことで、巻線コイルに部分放電が起こり、相間短絡が過去起こった。
また、ケーブルや絶縁コイルを機材や工具をぶつけたりすると、絶縁体に小さな傷が生じてしまい、そこに電界集中し、部分放電が起こったりもする。
回転子のローター挿入時も「ぶつけ注意」だ。
コイルエンドの部分をぶつけてしまい、運転開始後、数ヶ月経って、短絡や地絡が発生したケースは多い。
分かりやすいサイト
短時間で、いい知識が得られるのでオススメだ。
検索すると、大量の情報があって、時間が食うが、ここから直接アクセスしてしまえば、そこまで時間はかからない。
一読しておくと、一気に強くなる。
①日立産機システム
「部分放電(コロナ)試験とはどのようなものですか?」
②kikusui 技術資料
「部分放電試験について」https://www.kikusui.co.jp/catalog/pdf/files/1999/kik99_69_data_partial.pdf
③三重大学大学院 研究資料
「微小空隙における部分放電現象の研究」
※この資料はGoogle検索でPDFで上がっている。
④東芝論文
「発電機のオンライン絶縁技術」https://www.toshiba.co.jp/tech/review/2008/04/63_04pdf/f05.pdf
⑤一般論文
「部分放電検出方法および検出装置の開発」
http://nissin.jp/technical/technicalreport/pdf/2010-134/2010-134-12.pdf
⑥一般論文
「巻線の部分放電現象に関する研究」
https://www.furukawa.co.jp/jiho/fj133/fj133_04.pdf
まとめ
「部分放電(コロナ放電)から絶縁破壊(水トリ―)に繋がるまでの話」はどうだったでしょうか。
電験の勉強でもありますが、すごく印象に残ったのではないでしょうか??
電験の情報に加え、論文やメーカー資料についても触れたので、情報量は多かったもののきっちりイメージできるようになったかと思います。
「部分放電」という言葉は「変圧器の絶縁油劣化に関する問題」でも扱われる言葉なので、きっちりと現象の意味を覚えておきましょう。