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サイリスタ、GTO、IGBTの違いを押さえて、まとめて覚える

お疲れ様です。

 

桜庭裕介です。

 

今日は「機械科目」の中でも敬遠されがちな「パワーエレクトロニクス」の分野を解説していきます。

 

サイリスタ、GTO、IGBTの違いから学ぶ

本記事では各素子の説明もするが、その前に「特徴の違い」から解説する。


ネットで検索すると、それぞれの素子の説明は大量に出てくるが、その違いについてはまとまった資料がなかった。今回紹介する素子の特徴は正直理解しづらいし、何が何だか分からなくなるのだが、覚えやすい方法がある。


「歴史を追う」という方法だ。

ちょっとした工夫だが、順を追って覚えることでそれぞれの素子の特徴が覚えやすくなるのでオススメだ。


仕事上でも、私生活においても活用する機会があるので、この記事でまとめあげておくことにした。


先日配信した記事の補足にもなる。 

strategy.macodenken.com

 

素子の特徴の違い

この記事で紹介する素子「サイリスタ」「GTO」「IGBT」は「スイッチング素子」である。

では、どこに違いがあるかというと「流れる電流の切り方」(ターンオフ)に違いがある。


【サイリスタの特徴】
サイリスタはゲートからカソード方向に電流を流すことで、本流であるアノードからカソードへ電流が流れる。(ターンオンという)


電流を切りたい場合は

①本流の電流を一旦切るか
②カソードからアノード方向に電流を流す(本流の逆方向から電流を流す必要がある)


この2つのどちらかの方法でしか電流を止めることができない。つまり、転流回路が別で必要になる。


正直な話、転流回路が必要となる時点で面倒だ。もし自分が設計を行う立場として考えてみると、費用はかかる上に検討に必要になってくる。こういった背景もあり、GTOが開発された。


GTOは本流回路の電流をサイリスタに比べて、簡単に切ることができる。

【GTOの特徴】

ゲートからカソード方向に電流を流すことで、本流の電流を止めることができる。しかも、小さな電流で済むので、点弧回路と消弧回路は必要だが、小さいもので済む。

新電気という電気雑誌でも紹介されてきたが、ひと昔前の電車では主流として使われていた。


そこから長い間、自分たちの父母世代は特にお世話になる。

※GTOは第2世代のVVVF素子とも言われる。(第1世代はサイリスタ)


ただ、GTOにも課題はあった。ターンオフ時間が長かった。製品化するにあたり、ここを改善すべく別途回路を追加したりしていた。また、駆動電力がかかるという課題や騒音も大きいといった課題もあった。



技術研究は進み、IGBTの開発に注目が集まった。


【IGBTの特徴】

MOSFETをゲートに組み込んだトランジスタだ。動作としては基本的にGTOと変わらない。(仕組み上、名称が違うので混乱しがちだが、本流ではない部分から電流を流して駆動させる、逆方向に電流を流して本流の電流を止めるというのは同じ)


IGBTだと、エミッタからゲートに電流を流す。(各部位の名称については、後述します。)



こういった歴史的背景があって、IGBTが作られたため、下記のような特徴がある。


①スイッチングの速度が速い
②騒音が小さい
③駆動電力が小さい


ただ開発当初、費用が高いといった問題もあった。だが、大量生産技術が発達し、費用の面での課題が解消され、世の中に多く普及することになったのである。

 

 

 


それぞれの違いをざっくりと、捉えることができたと思うので、それぞれの素子の特徴を学習していこう。

 

※徐々に追記していきます。

サイリスタ

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PNPN の4重構造だ。

最初のP型半導体にアノード、最後のN型半導体にカソード、そして中央2つのうち何れかひとつにゲート端子が接続されている。P型半導体からゲート端子を引き出しているものを「Pゲート」と呼ぶ。

N型半導体からゲート端子を引き出しているものを「Nゲート」と呼ぶ。


 

 

GTO

 GTOとは「Gate Turn Off thyristor」の略だ。

GTOの略を知らない人は多く、サイリスタであることを知らない人も多い。
自己消弧素子」であることは押さえておこう。

文字通りにゲート電極の信号で消弧ができる。ゲート電極に与える信号は負電圧で、正電圧はカソードにかける。但し、消弧する際は大きな電流が必要となることを覚えておこう。


IGBT

IGBTとは、Insulated Gate Bipolar Transistorの略だ。

電験受験者は覚えておくと、得をするのが

「MOSFETをベース部に組み込んだバイポーラトランジスタ」という文言。


こういう定義は押さえておくといい。泥臭いが、点に繋がる。


それでは意味を理解していこう。がっつりと電子工学の内容(電子の流動や障壁等の話)をするわけではないので、安心して欲しい。


IGBTはサイリスタと同様にP-N-P-Nの4層からなる半導体素子。ただ、サイリスタ動作をさせずにMOSゲートで電流を制御できる素子。


MOSFET、バイポーラトランジスタのことを少し理解しておくと、今後の勉強が楽になるので補足しておく。


・MOSFETとは「Metal Oxide Semiconductor - Field Effect Transister」の略だ。

・BJT(バイポーラトランジスタ)とは「Bipolar Junction Transistor」の略だ。

電圧制御型のMOS-FETには欠点があって、高耐圧に伴って抵抗による発熱が大きくなる。また、
バイポーラトランジスタのスイッチング速度は低いという欠点がある。これらを組み合わせることで、それぞれを補うようにしたのがIGBTだ。


入力段にMOS-FETを、出力段にバイポーラトランジスタを1つの半導体素子上に構成したものである。


このように欠点の話から構造を勉強していくと、意外にも素子の勉強は覚えやすかったりする。