2019年7月17日追記
各効率の意味を記載した。
2019年8月13日追記
記事の充実化を実施。
「効率」を網羅的に覚えよう
今回の記事では、汽力発電分野で出題される「効率」を整理する。
①送電端熱効率
②発電端熱効率
③ボイラー効率
④サイクル効率
⑤タービン効率
全部で5つ押さえて欲しい。
ここの学習で躓く人の特徴として
「細かい所から学習するクセがある人」
「難しい所が気になる人」
そう。まさに自分のことである。
公式を見てみると「エンタルピーといった専門用語」や「各種の効率」が並ぶので、よくわからないこともあり、詳しくネット検索してしまう。
これは当然いいことである。論文を調べたりすると知識に厚みが出るのは確かだ。
だが、試験まで時間がない場合は必ずしもあなた自身ためにはなるとは限らない。
結論を言ってしまうと
基礎知識が身に付いていない状態では、難しい知識を学んでも吸収しづらい。というかほとんど身にならないだろう。
失敗を経験した者からの上手くやるアドバイスとしては
①公式を一旦まとめる
②ぼんやり公式を使うイメージを抱く
③問題を解く中で公式を実際に使ってみる
これらのステップをまず一回やってみることだ。
それからエンタルピーやエントロピー、各種効率の計算の発端を学ぶことにしよう。基礎を身に付けたあとだと、知識の肉付けは思いの他やりやすくなっていることに気付くだろう。
本記事では
「公式のまとめ」「公式のポイント」「公式の補足説明」の順で説明する。問題については、いい問題を抽出してお伝えする予定だ。
公式のまとめ
電験に出題される公式のまとめ表。
実際に自分が試験の時に活用していた一覧表である。
そのため、日本語部分や記号部分が参考書と違っていて、覚えやすいと思う。
「公式まとめ」のポイント
さらに、まだポイントがあるので気が付いて欲しいのだが、いくつか「工夫」をしてある。
まず、覚えるべき公式の「並び」だ。
市販の参考書では、大半が「送電端熱効率」や「発電端熱効率」が最後になっている。一番試験で出題されるにも関わらず、最後に学ぶのだ。
これは無駄でしかないし、最初に覚えにくいと感じてしまったら、簡単な物でも覚えにくいし、苦手意識を持ってしまうデメリットもある。
勉強の序盤にゴチャゴチャと細かい部分の話や難しいエンタルピーの内容を学習するのではなく「パッと頭に入る部分」を学ぶのがコツだ。(以前は苦手分野だったが、今は得意分野だ。まず確実に点が取れる。)
最初の2つの公式は特に覚えやすい。
燃やした燃料に対して
「送電できた電力量はいくつか」
「発電できた電力量はいくつか」
それをパーセントテージで表しただけの公式だ。
また3つ目のボイラー効率も似たようなものだ。
燃やした燃料に対して
「水に伝わった熱量はいくらか」をパーセントテージで表す公式。
ボイラーによっては、ボイラー水が流れる細管にススがこびりついていて、ボイラーの熱が伝わりにくいものもある。そういった場合、燃料消費量が多いにも関わらず、ボイラー水には熱が伝わっていないので効率は低い。
また、エンタルピーの式で悩む方もいるが、難しく考える必要はない。(過激な表現になってしまうが、別段学者を目指すわけではないので、突き詰めて研究レベルまでエンタルピーを学ぶ必要はない。)
公式で使用されるエンタルピー、要は何をしたいかというと「移動した熱量を表現したい」のである。(後段で再度説明する)
ボイラー効率を例に説明すると「ボイラー水が吸収した熱量」を分子単位で直接測ることは難しい。だが「蒸気状態のエネルギー」と「ボイラーからエネルギーを受ける前の水のエネルギー」は温度等から算出することができる。
こういったことを考えておくと、公式の理解が進み、一気に覚えやすくなる。
各公式の説明
ざっくりと、公式を確認してポイントについても学ぶことができたと思う。記憶定着のために、各効率について、もう少し深堀していく。
各パラメータを中心に解説していくので、苦手なところは特に読んでおくことをお勧めする。
①送電端熱効率
燃やした燃料に対して
「送電できた電力量はいくつか」
高校や大学、仕事で発電機廻りのことを勉強していない方はイメージしにくいと思うが、ここで知っておいて欲しいことがある。
「発電機の出力は、実はそのまま需要元に届けることはできない」という事実だ。送電線や変圧器といったルートを経由して、電気は送られるのだがどうしても「損失」が出るのだ。
また、発電所内の設備のほとんどは電気を使う機器。火力発電所を例で挙げると、プラント起動時は他の発電所から電気をもらって、給水ポンプや送風機を駆動させている。しかし、プラントが起動し、運転モードに入ったら、自分の発電所で作った電気で、給水ポンプ等の設備を駆動させる。その方が損失は小さくなるからだ。
そのため、所内比率Lといったパラメータが公式に組み込まれている。(ごちゃごちゃ書いたが、要は「発電機出力の一部は使わせてもらうので、送電端には発電機出力より低い出力になるよ」ということである)
②発電端熱効率
燃やした燃料に対して
「発電できた電力量はいくつか」
この意味さえわかっていれば、自ずと公式が理解できる。
分母のBHについてだが、Bは燃料の使用量だ。(使用した英字(B)自体に意味はない。)
では、Hは何かというと「発熱量」だ。
物体によっては燃やしてもよく燃えず、水を温める能力が低いものもある。そのため、公式の分母である「燃やした燃料」の意味としては「量×発熱量」となる。
③ボイラー効率
燃やした燃料に対して
「水に伝わった熱量はいくらか」
ポイントで既に記載したが、投下した燃料と同等のエネルギーを水に伝えることはできない。損失が必ず発生する。ボイラー効率がいいものほど、高性能だ。
こういった認識で公式を覚えると、かなり忘れにくい。分母は投下した分の燃料だし、分子はボイラー水の吸収したエネルギーを入れるだろう。
④サイクル効率
サイクル効率という言葉は仕事でプラントに携わっていなければ、あまり聞かないと思う。
③ボイラー効率に意味は近い。ボイラー効率では「ボイラー」を中心に考えたが、サイクル効率では「プラント全体」について考える。
「ボイラー水に伝わった熱」が「どれだけタービン入口に供給できたか」というのを整理したのがサイクル効率だ。
⑤タービン効率
「タービンでの仕事具合」を示す効率だ。
良いタービンであれば、蒸気を流入させればよく回ってくれる。
だが、出来の悪いタービンであれば蒸気を供給しても、上手く羽根にあたらずに回らないこともある。
それらを計算するために
公式の分母には「供給した熱」、分子には「タービンの仕事量」を入れる。理想的なタービン効率は100%だ。入れた分の蒸気エネルギーをそのまま出力に変換できる。
【参考情報】
効率の公式の「3600」とは何か?
3600はどこから来るかというと、電力量を表す単位である〔W・h〕とエネルギーを表す単位である〔J〕の関係から来る。
結論を言うと
1〔W・h〕= 3 600〔J〕。
この説明として、自分は下記のように表現すると分かりやすいと感じる。
「1ジュールの仕事量を1秒間で行ったとき、それを1(ワット)と呼ぶ」と定義されているのだ。
⇒1〔W・S〕= 1〔J〕。
よって、1時間は3600秒であるので、1〔W・h〕= 3 600〔J〕となる。
※別の表現としては、1Wの性能の機械を3600秒間、仕事させたら何ジュールか?といったものも分かりやすい。