「交流って、ややこしい」「直流の方が好き」という人は多い。その原因が「交流ならではの表現方法が嫌い」にある。裏を返せば、ここを理解すれば一気に分かるようになる。
おはようございます。
電験と電気業界を研究している桜庭裕介です。
簡単な自己紹介を添えておきます。
≪実績≫
❑転職関係❑『残業10時間以下』&『年収変動なし』の企業に転職成功
❑電験研究歴❏
トータル100年分の過去問を分析。
・電験1種 40年分
・電験2種 40年分
・電験3種 20年分
≪実績≫
❑電験3種関係❑
【電験|電力(水力発電)】水車まわりの記事がそのまま試験に出題されました
❑電験2種関係❑電験2種|機械【結論:ポイントを押さえて選択肢を減らす攻略法は有効だった】
❑TOEIC❑
電気エンジニアTOEIC攻略までの道のり【800点までは取れた】
❑雑誌連載❑
電験三種「理論の超入門」
今日のテーマは「交流波形の表記を理解する」だ。
交流はベクトルやフェーザ表示で表現
実は、自分もベクトル図やフェーザ表示という言葉が嫌いだった。学生時代を思い出すと、交流回路より直流回路の方が好きだったことをはっきりと覚えている。
交流回路が得意になったのは社会人になってからだ。
電験では、直流回路と交流回路は同じぐらいの割合で出題される。
しかし、実社会、特に工場等では「交流回路」がメインとなる。
当然、制御回路は直流ではあるが、制御回路が故障するようになれば、制御回路が複雑であることもあり現場メンテナンス班で修理することはほぼ不可能なので、メーカー送りとなる。
交流回路の方は、ポジションスイッチの修理等対応できることがあるので、現場の仕事をしていると自ずと交流回路には強くなっていく。
そこで、交流回路が苦手だった自分が要点を押さえて、重要なポイントや躓くポイントをお伝えしていければと思う。
まず、交流分野をややこしいものとしているのは「表現方法」や「用語」だ。
ここをまず整理した方が良い。
交流を表現する方法は主に2つあることを知ることから始めよう。
1.ベクトル図
2.数式表現(フェーザ等)
1.ベクトル図
ベクトル図、ベクトル図と発言する教授がいるが「横文字を使うな!」と思うことが自分は多々あった。
ベクトル図は、そこまでおおそれたものではない。
簡単に言ってしまうと
【矢印を書くだけ】だからだ。
・矢印の長さで「対象の大きさ」を表現する
・矢印の向きで「角度」を表現する
たったこれだけなのだ。
そもそもベクトルとは何か
似たような表現に「スカラー」というものがある。(高校時代の物理の授業で聞いたことがあるな・・と思い出した方もいるのではないだろうか)
このあたりの復習をすると、理解しやすくなるのでオススメだ。
【スカラーの定義】
「大きさ」のみの情報を持つ量のこと
【ベクトルの定義】
「大きさ」と「方向」という2つの情報を持つ量のこと(矢印で表現される)
自分がよく例え話で使う例を紹介しよう。何となく、ベクトルという矢印を使う価値が分かるはずだ。(要は物理現象を表現するために必要なのだ)
❑ベクトルとスカラーの例え❑
あなたが友人に自宅に行こうとして、最寄り駅に到着した。
友人が教えてくれた情報が「最寄駅から200mの歩いた所に自分の家があるよ」だとする。この場合、あなたは駅から半径200mの範囲を探さないといけない。
一方で「駅から南方向に200m歩いた所」という表現であれば、あなたは方向を決めて探し出すことができる。
これがまさにスカラーとベクトルの違いである。
交流でのベクトル
この円が基本だ。
円内に矢印が存在していて、中央の点を起点に矢印は角度を変わるのだ。
交流電圧、交流電流は矢印で表現できる。
電圧や電流の大きさが大きければ大きいほど、矢印は長くなるので円は大きくなる。
時間が経過することで、矢印が回転する。
この回転こそが、交流が「波形となる理由」でもある。この話は極めて重要なので覚えておいて欲しい。
よく質問されるのが「ベクトルと波形の繋がり」
下記のような図を自分で描いてみよう。
矢印が時間経過で回転するにつれて、波形が形成されていくことが分かるだろう。
2.数式表現(フェーザ等)
交流のベクトル表現方法を学習したので、次は「数式表現」を学ぶ。
数式での表現方法が大きく分けて3つある。
3つあることが複雑さを加速させているので、一つずつ丁寧に整理していこう。整理できてしまえば、怖いものはない。
①極座標表示
⇒フェーザ表示とも呼ばれる
②複素数表示
③極形式表示
①極座標表示(フェーザ)
「 ベクトルA=|A|∠θ 」
これをフェーザ表示と呼んだりもする。
②複素数表示
「 ベクトルA=a+jb 」
③極形式表示
「 ベクトルA=|A|cosθ+j|A|sinθ 」
複素平面という考え方が入ってくる
数式表現するためには「複素数」という考え方がどうしても入ってくる。
複素平面図は下記のような図だ。
縦軸が虚数
横軸が実数
という図である。
なぜ、この考え方を取り入れないといけないかというと
コイルは「jωL」
コンデンサは「1/jωC」
という虚数が負荷に入ってくるからだ。
そのため、電流計算をしたら分かるが、RLC回路の電流は複素数が答えとなる。
まとめ
以上「交流回路のベクトル図とフェーザ表示を理解する【電験でよく出題される】」の記事となります。
ベクトルという混乱しがちなものを定義から押さえて、さらに混乱を招きがちな数式表現を紹介した。
「フェーザ表示」という言葉が混乱を招くが、要は極座標表示と同じである。
このあたりを混乱せずに整理しておけば、電験の過去問を解く際に「何が何だか分からん」という状態を防ぐことができるだろう。