2019年8月8日追記
分かりやすい表現にしました。
直流送電を理解する
今回の記事では、直流送電の仕組みと必要性を説明する。
電験三種において、「交流送電との比較」といった形式でほぼ同じ問題が出題されている。
また、電験2種、1種の一次試験でも出題される。実際の場所の名前を答えさせるといった問題も出ている。直流送電の仕組み自体の問題もあるので、しっかり学んでおくべきだろう。
さらに二次試験においては、直流送電の利点を答えるといった問題が出題されるため、きちんと自分の言葉で説明できるようにしよう。
まずは「直流送電の仕組み」から説明する。
直流送電の仕組み
まず、直流送電というシステムのイメージを掴もう。
いきなり細かい部分の勉強するのではなく、大枠を捉えるように勉強すると忘れにくいからだ。
「送電系統に並列する発電機の大半が三相交流の電気を発生させていること」を認識しておこう。
その上で、直流送電が行われているのだ。
では直流送電はどのような仕組みで行われているかを見ていこう。
①交流系統の電圧を変圧器にて変圧後、変換器(コンバータ)で交流から直流に変換する。
②直流の電気を受ける受電側は、モーター等を駆動させるためにも逆変換器(インバータ)によって、直流から交流に逆変換する。
この分野の勉強をしたことがない人にとって、これだけでは正直メリットが分からないと思うので解説する。
直流送電にどんな意味があるのかを知る
直流送電には大きな利点が存在することをご存じだろうか。少なくとも、自分は電験の勉強をするまで知らなかったので紹介する。
【1点目】
交流電圧と違い、力率の悪化(安定度の問題)や短絡容量の増大といった問題がない。
【2点目】
1回線あたりのケーブル本数を減らすことができる。(交流3本、直流2本)
【3点目】
長距離ケーブル系統において、交流よりも絶縁値を低くできるので、製作費が抑えることができる。
【4点目】
周波数の概念がないので、異周波数の系統に電力供給を行うことができる。
【5点目】
交流と違い、長距離送電に向いている。交流には表皮効果があるためだ。
メリットだらけである。最早、直流送電にしてしまってはどうだろうと昔の自分は考えていた。
だが、そうできないデメリットがある。
直流送電のデメリット
直流送電にも欠点があるのだ。無効電力を送ることができないのだ。変換器が必須であり、遮断器も大型のものが必要。
これらのデメリットを解説する。
【1点目】
有効電力しか送ることができない。
系統に接続される負荷は、大半がただの抵抗ではない。電動機のようなコイルやコンデンサ成分の負荷である。また、モータのほとんどが誘導電動機だ。直流の電気だけでは誘導電動機を駆動することはできない。付属設備が必要になってしまうのだ。
【2点目】
誘導電動機を回す為には、交流に変換する変換器が必要となり、さらには高調波まで発生してしまう。
高調波は機器に悪影響を及ぼす。モーター等の負荷に不平衡のような電圧を加えることになり、異常な運転状態になる可能性がある。
費用面でも問題がある。変換器は高い。費用がかかる。
【3点目】
交流と違い、0点がないため遮断するのが困難。その分、遮断性能の高い遮断器を用意する必要が出てくる。
交流と直流のバランスが重要
メリットデメリットを学んできたが、系統のことを少し考えてみて欲しい。
送電系統を運用していくためには
「交流と直流をバランスよく使っていく必要があること」に気がつく。
送電系統というのは、大きくなればなるほど潮流の制御が難しい。事故が起こったときの波及的影響も大きいため、全ての電力系統を接続することは困難。
また、西日本と東日本では周波数が50Hzと60Hzで違いがあるので、そのまま接続することはできない。そのため、同期を取る必要がなく、すぐに連携できる直流送電が役に立っているのである。
また、交流にて長距離送電を行う場合、軽負荷時ではフェランチ効果で送電端より受電端の方が電圧が高くなるが、直流送電ではフェランチ効果は起こらないので、ケーブルでの長距離送電時には「直流送電」が採用されていることを覚えておこう。
まとめ
以上、「【電験完全攻略】電力科目「直流送電」」の記事になります。
直流送電は、主に周波数の異なる送電系統同士を接続するために用いられます。地中送電時のようにケーブルを使用する場合かつ長距離送電となる場合に直流送電かわ採用されていて活躍しています。
今日はまず直流送電の仕組み、メリットを覚えましょう。なかなか覚えにくい分野の話でしたが、きっちり物にして得点を取っていきましょう。