エネルギー管理士の問題(平成29年度問10)である。
「より対応力を磨く」という観点から様々な問題にトライするというのが狙いだ。そして、学習してきた知識が花咲く状態になっているかを確認してみて欲しい。
誘導電動機では、特別な始動方式を用いずに始動時に全電圧をかけると、始動電流は定格の5~7倍と大きくなるが、始動電流の無効分が大きく、始動トルクは定格の1~2倍程度に止まる。この場合、もし電源容量が小さいと始動電流による電源電圧変動が大きくなったり、電動機の始動時間が長くなったりすることが懸念される。したがって、電源容量の大きさを加味してこの始動方式が適用できる電動機容量を決定する必要がある。
かご形誘導電動機においては、始動電流を抑え、電源電圧変動を抑制するために種々の始動方式がある。そのうち、リアクトル始動方式では電圧を1/aに下げて始動すると、電動機の始動電流が1/aに低減できるが、始動トルクは1/a^2になり、トルクの低下が大きくなるので、電圧変動とのバランスに配慮する必要がある。
また、インバータを用いて電動機を運転する場合には、始動時の滑りを定格運転時に近い値として始動できるので、電源に与える影響を軽減できる。
巻線形誘導電動機では二次抵抗法により始動すれば力率良く、始動電流が小さくても大きなトルクを得ることができる。
まとめ
この問題は詳細を理解しているかどうか?まで学習確認するとなると結構大変な作業になります。
とはいえ、こういった表面だけの用語問題もヒントがないので意外と難しいです。知らなければ即失点になってしまいますから。
今回紹介した問題の中のリアクトル始動は「電流とトルク」の関係が重要で、ここがよく試験で出題されます。
ちゃんと根本から算出できるか今一度確認しておくと良いでしょう。
始動に関する計算問題
始動をきちんと理解しているか?を問うような問題もある。知っていれば簡単だが、知らないと解けないというシンプルに嫌な問題。
【問題文】
巻線形三相誘導電動機(定格周波数60Hz、P=8極)での運転条件として、停動トルクと始動時トルクを同じにしたい。停動トルク発生時の回転速度が675rpmとなった。
始動時において二次側に入れた抵抗Rは二次抵抗の大きさの何倍になるか。また、停動トルク発生時のすべりも求めよ。
停動トルク発生時のすべりをs1として
トルクの比例推移より
r2/s1=(r2+R)/s2
が求まる。
さらに、始動時のすべりs2=1であることから
r2/s1=(r2+R)
となる。
あとは停動トルク発生時のすべりを求めれば、
同期速度は回転速度が900rpmであるから
N=900(1-s)
675=900(1-s)
s1=0.25。
電験のコツ
ここからが電験のコツなのだが
「二次側に入れた抵抗Rは二次抵抗の大きさの何倍になるか。」
という文言。
何倍になるか?という表現を数式に直せる力を身に付ける必要があるのだ。
上記の式ではRが余ってしまい、問題をこれ以上解くことができない。
だが「R=xr2」とおくことで、r2で括れるようになるのだ。
r2/0.25=r2(1+x)
となり、x=3が求まる。
つまり、二次抵抗の3倍の抵抗を入れたら停動トルクとなる。
まとめ
今回紹介した問題では敢えて、解く順番と逆にヒントを与えるようにしている。これだけで難易度の体感が随分違うだろう。
また、外部抵抗を求める側からの責められる形式も意外に嫌だと思う。特にxr2と置く所は学校での教育を受けているかいないかで随分難易度は違うはず。
だが、今回紹介した問題で経験しておけば、電験本番で対峙したときに対応できる能力は遥かに違ってくるだろう。