2019年7月7日追記
対地電圧が上昇するメカニズムを別記事にしました。最下部にリンクを掲載してあります。
2019年8月9日
記事を完全レビューアップしました。読みやすくなっています。
中性点接地を理解する
今回の記事では、三相線路での中性点接地の必要性を説明する。
電験三種において、ここの分野だけは過去何度も繰り返して、ほぼ同じ問題が出題されている。
また、電験2種、1種の一次試験でも出題されている。二次試験においては「中性点接地の種類を述べなさい」といったスレートな問題は出題されないものの、論述の回答の中で混ぜ込むような問題が出題されている。
まずは、三相線路において中性点を接地することに「どんな意味があるのか」を知っておこう。
正直、自分はよく忘れるので定期的に復習するようにしている。
接地とは何か、接地の種類
以前、変圧器分野で接地を説明したことを覚えているだろうか。最近から本ブログを見て頂いている方はまだかもしれない。
よく勘違いをされる方がいるが、変圧器であっても、発電機であっても、接地の必要性や接地方式毎の得られるメリットは変わらないのだ。
異常事態が起こったときに健全相の電圧を上げたくないので、「地絡電流をどこまで許容させるか」が論点になる。
「接地とは何か」「接地の必要性」「接地の種類」については、下記のリンクから勉強してみて欲しい。
三相電路で中性点接地する必要性
よく見かける鉄塔と三相電路。電線というのは24時間野ざらしの状態である。台風等の自然災害時もその状態は変わらない。
現状ではどうしようもないものである。
のざらしのため、物がぶつかることで電線が損傷してしまうケースが非常に多い。さらに落雷である。
つまり、短絡や地絡は起こるべきして、定期的に起こってしまうのである。
中性点を設置する必要性の答えを先に述べるが
一線地絡が発生した場合、接地していないケースだと抵抗が大きく、地絡電流が小さいのだ。つまり検出することが難しいのである。
検出できるようにしつつ、地絡電流を抑えるというのが中性点接地の目的だ。
また、中性点接地もただ行えばいいというものではない。中性点に設ける抵抗値によって、一線地絡による中性点の電位上昇から健全相の対地電圧が高くなってしまうのだ。
このあたりの知識も問題を解く上で重要になってくるので解説していく。
対地電圧と地絡電流の大きさが変わると何がいいのか
勉強当初、正直よくわからなかった。
対地電圧が上がると何故ダメなのか。
地絡電流の大きさを低くするために中性点に入れる抵抗の値はどう決めるのか。
インターネット上や参考書には、このあたりを解説した資料がなかった。検索すると感じるが、痒いところに手が届かないような感覚だ。
本記事で明らかにしておく。
地絡電流
まず地絡電流が大きいとどんな悪いことがあるのか、説明する。
「大電流が流れることで、周囲に影響を及ぼすから」
至ってシンプルでだった。
大電流が流れると、電磁障害が起こる。
この影響は思っている以上に大きくて、電子機器に影響を及ぼすくらいの影響力がある。電磁障害で自分の持っている電子機器が破損したら、物凄く頭に来るだろう。そもそも健康障害という問題も議論されたりしているので、極力避けたいものなのだ。
健全相の対地電圧
次に「健全相の対地電圧が上昇するとどんな悪いことがあるのか」を説明する。
※健全相電圧が上昇するのではないので勘違いしてはいけない。以前、勘違いしている方がいた。
悪いことは何かというと
「送電線の絶縁がより高電圧に脅かされるから」
これもまたシンプルな答えである。
対地間に大きい電圧がかかるということは送電線に負荷がかかることと同意だ。
接地方式に種類がある理由
「ケースバイケースで接地方式を使い分けるとメリットがある」
これが理由だ。
例として分かりやすいのが
「直接接地と非接地方式」
この2つは相対しているので理解しやすい。健全相の対地電圧を抑えるためには、1線地絡電流が大きくなるのをある程度、許容する必要があることが分かる。
超高圧の送電線の電圧は数100kVもあることをご存じだろうか。
非接地方式を採用した場合、一線地絡が発生すると√3倍まで対地電圧が上昇することになる。ものすごい電圧がかかることを想像するのは容易い。
そのため、直接接地方式を採用しているのだ。
一方で、変圧器はどうだろうか。
変圧器を含む変電所は町中にあったりする。そのため、1線地絡電流が小さくし、周りへの影響が少なくする必要があるのだ。
そのため、非接地方式が採用されている。
まとめ
以上、「中性点接地はどんな意味があるのか(送電分野③)」の記事となります。
若干、内容が複雑なので本ブログではなくNOTEに書くべきか悩みましたが、出来る限りシンプルに書かせてもらいました。
このあたりがよくわからないといった質問が多いので、役に立つかと思います。(一方で、昼休みに複雑な記事は読みたくないよといった方には大変申し訳ないです)
「対地電圧が上昇するメカニズム」については、また別記事にて説明したいと思います。
2019年7月追記
「対地電圧が上昇するメカニズム」を分かりやすくnoteにまとめました。