水力発電の種類を学ぶ
前回の記事では電験に特に出題される「水車の種類」と「吸い出し管」を解説した。
これに加えて「水力発電の計算」を学習することで大体、点が取れる。
ただ用心をしておくに越したことはない。
「水力発電の種類」も稀に出題されることがあるので、この記事で押さえておく。
過去問だけで学習すると、まばらになっており、水力発電の全容を掴みにくい。本記事でまとめておいたので活用頂ければと思う。
この分野の出題形式としては「知らないと解けない問題」に分類される。
だが、恐れることはない。
一度勉強しておけば、忘れにくいし、自信をもって試験会場に向かうことができるはずだ。
はじめに
水力発電といっても、たくさんの種類があることはご存知だろう。小学校や中学校、高校で遠足や見学で訪れたことがある方は軽く思い出してもらえるといい。
実は覚えやすいコツがあるので、ご紹介していく。
(覚えやすいように整理しておきますので、そのまま覚えてもらえると良いかと思います。)
ただ覚えやすいコツといっても、大々的に凄いことをするわけではない。
「きちんとカテゴリー分けをする」
今回の「水力発電の種類を覚える」を例で挙げると
①タービンを回すために必要な「落差」を確保するため方法といったカテゴリー
②運用によるカテゴリー
このように2つのカテゴリーに分ける。
これをするだけでも、かなり記憶しやすくなる。
この考え方は仕事でも使えるし、色々な場面でも応用できるので覚えておいて損はない。Twitterや勉強会等で「カテゴリー分け」について、何度もお伝えしてきたが、こういったメリットがあるのだ。
ではさっそくだが「落差に関するカテゴリー」を勉強していこう。
①落差を得るための方法
水車を回し、発電するためには「水に落差というエネルギー」を与えなくてはいけない。
水に落差をつけるためには
大きく分けて、3つ方法がある。
・水路式
・ダム式
・ダム水路式
それぞれについて、詳しく見ていこう。
水路式とは
河川の上流に堰を設けて、水を貯め込む。
そこから水は水路を流れ、沈砂池を経由し、導水路を通り、上水槽に溜まる。そこから水圧管を流れ、水車に流入し、水車を回転させる。
【水路式のフロー】
沈砂池⇒導水路⇒上水槽⇒水圧管⇒水車
ダム式とは
河川の幅が狭く、かつ地盤の堅固な場所に、堰を作り、ダムを造る。堰の上部から水を放出することによって、河川の底部と上部の落差を活用できるようにする仕組みがダム式だ。
大容量の発電所はこの形式が多い。
ただこの方式は、立地条件が厳しいため、なかなか設置することができない方式でもある。
【ダム式のフロー】
取水口⇒水圧管⇒水車
ダム水路式とは
文字通り、水路式とダム式を組み合わせた発電方式である。
ダム式のように一定量の水を確保できない場所において、水路を設置し水を導き、ダムに水をため込む。
ダム式のように水量が多くないため、サージタンクを設け、水量変化に対応できるようにする必要があるのが特徴。
【ダム水路式のフロー】
取水口⇒圧力導水路⇒サージタンク⇒水圧管⇒水車
ここまでで「水路式、ダム式、ダム水路式」の概要を押さえることができた。赤文字の部分は試験で出題される確率が高いのできっちりと覚えておこう。
②水力発電の運用による違い
水力発電は「水の運用方法の違い」によって、大きな違いがあり、名称までも変わる。
・流込み式発電所
・貯水池式発電所
・調整池式発電所
・揚水発電所
この他にも、機械の配置の違い、落差の違い、屋内式、屋外式といった違い、制御方式による違い等色々呼ばれ方がある。
電験に出題されるといった観点で言えば、上記の4つを覚えておけば間違いない。
それではそれぞれを見ていこう。
流込み式発電所
流込み発電所は、河川の流量を調整する設備をもたない。そのため、設備費用を抑えて、建設工期も短くすることができる。
そのかわり、当然ながら、河川の流量以上の流量は確保できないので発電量が制限されてしまう。
貯水池式発電所
季節変化にも対応できる程度の容量の貯水設備をもつ発電所が該当する。
豊水時期、軽負荷時に水を蓄えておき、渇水期等に放流する。
調整池式発電所
数日間であれば、負荷の変動に応じて、河川の流量を調整できる容量の設備を備えた発電所が該当する。
揚水発電所
「電気を作り出す働き」と「電気を消費する働き」をする発電所。
深夜帯、週末などの軽負荷時において、下部貯水池からポンプを駆動し、水をくみ上げ、上部貯水池に入れておく。(これを「揚水」という)
平日の昼間等のピーク負荷時に発電するのが、揚水発電だ。
また揚水発電所は、送電系統全体から見ても極めて重要な役割を果たす。送電系統において事故が発生し、ある発電機がトリップしたとする。
そういった場合、他の発電所の発電機が負荷を持つことになるので、状況によっては過負荷トリップしてしまうこともある。
そういった事態にならぬように発電量を確保するのだ。
「起動してから発電までの速さ」が要求される状況では、揚水発電はとにかく早いので活躍する。
まとめ
以上が、水力発電の種類(水路式,ダム式,ダム水路式,流込み式,貯水池式,調整池式,揚水式)の記事となります。
覚える量が多く、大変かもしれません。
しかし、ここは乗り越えておいた方がいいです。
最後に笑えるように、今のうちに知識を整理しておきましょう。