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【電験完全攻略】保護協調の意味|目的|仕組み|復旧まで理解する(変電設備④)

2019年11月1日追記
電験2種二次試験「保護協調問題の解説」を追加。


2019年7月7日追記
記事が見やすくなるように修文しました。

変電設備 保護協調の意味を説明できるようになろう

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保護協調をきちんと説明できる技術者は実は少ない。そのため、電験ではよく出題される。


まずは「保護協調の目的」を正確に理解しよう。

 

目的を理解すると、色々わかってくることに気付く。結果的に知識が肉付けされていく形になり、電験の1次試験だけではなく、2次試験の問題にも対抗できるようになる。

 

保護協調とは何か

今回の記事は、系統を安定に運転するために必要となる保護協調について説明する。技術者として当然知っておかなくてはいけない知識の一つではあるが、電験受験者も同様である。電験1種の二次試験でも、過去何度も出題されているので、確実に回答できるようにしたい。

まずは保護協調の目的から理解しよう。

 

保護協調の目的と具体的な内容

波及事故が生じないように、事故の範囲を最小限に留めるための対策。系統内には大量に遮断器が存在するが、動作する順番(秒数設定)を定めているのである。
わかりやすくいうと、家庭付近で短絡や地絡事故が生じた場合、最も近い遮断器が動作する仕組みとなっている。配電線の構成は、樹枝状のようになっているため、保護協調を制定していなければ、枝の根元側の遮断器が動作してしまい、全ての枝に影響(停電)が生じてしまうのである。
また、送電ラインから切り離された発電機が単独で運転をすることを防止したり、事故を修復したあとに、発電機が自動で並列してしまうことも防止する。

上記を踏まえて、遮断器の動作時間、遮断器の動作容量も加味し、保護協調を構築していくのである。

これら全般の仕組みを保護協調と呼ぶ。
また「保護器具相互の保護特性を整定すること」とも言う。


(参考)JEACでは下記のような記載となっている。

発電設備の故障の影響を系統側に波及させないよう、発電設備を系統から解列します。

連系された系統側の事故時には、系統から解列して単独運転が生じないようにします。

連系された系統の事故時の再閉路の際に、発電設備が系統から解列されていることとします。

連系された系統以外の事故時や、系統の瞬時停電等では、系統から解列されないこととします。

 

ここまでの記事の内容で、電験で点を取るために重要な「目的」と「具体的な内容」押さえることができた。


電験2種の二次試験問題にいい問題があるので、解いてみよう。理解がグッと高まるだろう。

 

電験2種二次試験「保護協調問題」を解説

「自家用変電所の過電流保護について、保護協調の観点から次の問に答えよ」

一般電気事業者から過電流継電器Ry1の限時整定値を変圧器二次側回路の短絡時に0.6秒以下とするよう要請されている場合、保護協調における適正動作時間差を考慮し、過電流継電器Ry2、Ry3の動作時間整定値を求め、かつ、瞬時要素付きの要否について述べよ。

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ただし、遮断器の全遮断時間は0.1秒、過電流継電器は誘導円盤形で、その慣性動作時間及び最短動作時間整定値は各0.2秒、余裕時間は0.05秒。

 


【解答】
Ry2の整定値 0.25秒。(Ry3との協調が可能であれば0.2秒)
Ry3の整定値 0.2秒。(瞬時要素付)

【解説】

まず、保護協調の問題を解くためには公式を2つ覚えておく必要がある。


①上流の継電器動作時間の求め方
下流の継電器動作時間+上流と下流の継電器動作時限整定差


②上流と下流の継電器動作時限整定差
下流継電器の遮断時間+慣性動作時間+余裕時間


ただし書きの理解が重要だ。
遮断器の全遮断時間は0.1秒、過電流継電器は誘導円盤形でその慣性動作時間及び最短動作時間整定値は各0.2秒、余裕時間は0.05秒を足し合わせると「0.35秒」

つまり、②上流と下流の継電器動作時限整定差「0.35秒」ということ。

 

下流の継電器動作時間は0.2秒と与えられているので
0.2秒+0.35秒で「0.55秒」


Ry2の整定値が0.55秒ということだ。


さらにRy1はRy2の上流保護継電器にあたるので
0.55+0.35秒で「0.9秒」

 

 

しかし、ここで気が付く。
「問題文にある0.6秒以下の遮断が実現できない」



実現するために下記のように考えていく。


まずは条件を満たすように「Ry1の整定値」から決める。

Ry1の整定値を0.6とすることで、動作時限整定差が決まっていることからRy2の整定値は0.25秒となる。


ここで困ったことにRy3の整定値を計算すると、0.25-0.35となり、マイナスになってしまう。

 

ここに対処するために「瞬時要素付きの継電器」にする。

慣性動作時間は変えられないので0.2秒となるが、瞬時要素付にすることでRy2との保護協調が実現するのだ。

 

Ry3の瞬時要素との協調が可能であれば、Ry2の動作時間を0.2秒にすることもできる。(Ry2の動作時間は短いほど良いからだ)

 

 

 

・・・

 

 

これが電験2種の二次試験の問題である。いかがだっただろうか??公式と考え方を理解していれば、解ける問題だということを認識してもらえただろう。

 

 

 

次は「保護協調が動作した後、どのように復旧していくか」を説明する。ここも重要なので、流れを覚えておこう。 

保護協調動作後の流れについて

事故発生時から復旧までの大まかな流れとしては
①「遮断器の動作により事故点を隔離する」
②「健全ラインは使用する」
③「事故点は電線交換等、修理を実施する。」
④「隔離箇所の遮断器を投入し、復旧する」

大まかな流れとしては、上記の4項目。

 

復旧と一言に言っても、復旧のやり方には複数の種類があることはご存じだろうか。現在、実用化され活用されている復旧方式を紹介する。 

 

現在の復旧方式 

「時限順送方式」と「配電自動化システム」を組み合わせて使用する方式が主流である。


簡単にまとめると、健全な送電ラインをできる限り使用して送電するといったシステムである。

ハイブリッドのようなシステムなのだが、それぞれ分けて説明した方が頭に入りやすいので、分けた記事にしておくので参考までに。

 

「時限順送方式」

送電ラインは、あらかじめ区分分けされている。柱上に設置される自動開閉器によって分けられている。この開閉器は、電圧を検知することができ、自動で接続してくれる設備。
事故直後は「大元の遮断器が切れている」状態かつ「開放器が開放されている」状態からスタートする。事故点を特定・復旧するために

①遮断器を投入する。

②自動開閉器を徐々に開放していく。

 

②を続けていくと、自動開閉器が接続されない区間が求まる。その区間の現場へ向かい、復旧を試みるのである。


 

「配電自動化システム」

送電線には、通常使用しないラインが存在する。

このラインは大規模な停電事故の際に使用するラインである。事故箇所がある送電ラインAがあったとする。事故箇所を隔離したのち、送電ラインBから不具合箇所を除いた送電ラインAに電気を送ることができるようになっている。

柱上に自動開閉器があって、遠隔操作により、B-A接続ラインを接続できる。

 

まとめ

以上、保護協調の記事になります。

保護協調は問題によっては複雑ではありますが、概要を押さえておくことで、臨機応変に対応できます。街を歩いているとき、柱上にある開閉器を見たりして現場のイメージを持っておくといいでしょう。配電線マップを見る機会があれば、とても勉強になると思うので、チャンスがある方はぜひ見ておくことをオススメします。

 

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