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電験に必要な原子力発電知識を徹底的に分析・集約した記事

「電験3種に出題される原子力発電分野の知識を補填したい方」「原子力発電分野を短期間で要点だけを押さえたい方」に向けた記事だ。要は「点を取りに行く資料」だ。

 

この記事だけで、点が取れるような資料となっている。過去問と合わせて活用して頂ければ、かなり成果が出るはずだ。

 

【目次】

1.原子力発電設備とは

2.核分裂を押さえる

3.質量欠損のエネルギー式(E=mc²

4.原子炉の形式を知る

 ①軽水炉タイプ(BWR、PWR)
 ②ガス冷却タイプ
  ・天然ウランガス冷却炉
  ・改良型ガス冷却炉
  ・高温ガス炉
 ③重水炉タイプ
 ④高速増殖炉タイプ

5.2つの効果を知ろう

 ①ボイド効果

 ②ドップラー効果

6.原子力発電と火力発電の比較

7.過去問の紹介

 

 

おはようございます。

電験と電気業界を研究している桜庭裕介です。

 

簡単な自己紹介を添えておきます。

 

❑電験研究歴❏
✔トータル100年分の過去問を分析

・電験1種 40年分
・電験2種 40年分
・電験3種 20年分

 

✔雑誌連載中(理論科目の超入門を執筆)

 

≪実績≫

❑電験3種関係❑

【電験|電力(水力発電)】水車まわりの記事がそのまま試験に出題されました


❑電験2種関係❑

電験2種|機械【結論:ポイントを押さえて選択肢を減らす攻略法は有効だった】

❑TOEIC❑
電気エンジニアTOEIC攻略までの道のり【800点までは取れた】

 

 

 

 

 

1.原子力発電設備とは何か

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❑原子力発電の仕組み❑

「原子炉で蒸気を作る」

      ↓

「その蒸気でタービンを回転させる」

      ↓

「タービン軸直結の発電機が電気を作る」

 

 

「・・・ん?」と思った初学者の方もいたのではないだろうか??

 

 

火力発電の仕組みは、既に学んでいると思うが

 

❑火力発電の仕組み❑

「ボイラーで蒸気を作る」

      ↓

「その蒸気でタービンを回転させる」

      ↓

「タービン軸直結の発電機が電気を作る」

 

 

そう。

 

蒸気を作る場所以外、火力も原子力も同じなのである。

 

 

では、原子炉とはなんだろうか??どんな仕組みで水が蒸気に変化するのだろうか??

 

 

当然ながら、試験ではここが出題される。

 

過去問を分析した上で、要点を押さえたツイートをした。

 

分かりやすく140文字にまとまってる。

 

 

 

 

 

❑鍵となる用語❑
・ウラン235、238

・低速中性子

・高速中性子

・減速

・水

・ドップラー効果

 

 

要するに

火力発電は石油などの化石燃料を燃焼させて、その熱で水を水蒸気に変える。

原子力は「ウランという燃料」を核分裂させて、熱を発生させるという仕組み

 

ということだ。

 

2.核分裂について

原子力発電と他の発電形式との最大の違いが「核分裂を利用するか否か」である。

 

 

では、定義を確認しよう。

 

核分裂とは・・・

原子が2個(まれに3個、4個)に分裂する現象

 

ただ分裂するわけではない。

 

・熱エネルギー

・高速中性子

 

が生み出される。

 

 

分裂後の原子を「核分裂生成物」と呼んでいることも押さえておこう。

 

3.質量欠損のエネルギー式は絶対に押さえる事

電験を受験する人は必ず質量とエネルギーの関係式である「質量欠損のエネルギー関係式」をマスターする事。

 

 

最近の電験は本当に難しい。

簡単な問題を解けないと、即不合格になるような問題構成なので恐ろしく感じる。昔と違い、かなりシビアだ。

 

 

では、何故自分が「質量欠損のエネルギー関係式」をずっと推してきているかというと・・・

 

 

 

原子力の分野の計算問題は

 

「この式しかないから」

「シンプルで点が取りやすいから」

「応用問題がないから」

 

 

では、どんな式かというと・・・(高校の物理で学んだはず)

 

 

質量とエネルギーの関係式

E=mc²

 

E:エネルギー
m:質量欠損[kg]
C:光速[m/s]

 

これは超簡単。

だが、自分は苦手だった。

 

質量とエネルギー関係式が苦手な理由

最大の理由は「意味が分かってなかったため」である。

 

恥ずかしい限りだが、ここを情報共有しておく事で役立つはずだ。

 

 

大きく分けて、下記の【3つの分からない要素】が入り混じっていて、問題が解けなかった。

 

・質量欠損mの意味が分からない

・光速が何かいつも分からない

・2乗を忘れる

 

個別に切り分けて考えると、めちゃくちゃ楽勝だったのでオススメする。(基本的に電験の問題は切り分けて考えていくと、理解できるぞ)

 

質量欠損mとは何か

まず、自分は「質量欠損m」の意味が分からなかった。

 

 

自分の知り合いの中にもここに疑問を持つ者がいた。

 

mは質量だろ!?

 

などとキレかけて、突っかかってきたことがあった。(勉強を教えていてエライ目に遭った。気持ちは分かる)

 

 

確かに物理学において「m」は質量を示すことが多い。

 

 

だが、今回の式(質量欠損のエネルギー関係式)ばっかりは「m=質量欠損」しかも「kg」で勘弁して欲しい。

 

 

 

分かりやすいように解説をつけるとしたら

「核分裂前の原子」の質量と「核分裂後の原子」の質量を比較した時、その差分が発生エネルギーと関係がある 

 

前述したが

核分裂すると「熱」が放出されるので、トータルの質量が減ることは容易に想像できるだろう。

 

光速Cとは何か

自分は「光速」という言葉も電験を勉強するまでよく分からなかった。

 

 

言葉の通り、光の速度のことだ。(しかし、自分で測定したこともないので、実感はない。)

 

 

本当にきちんと測定できているのか?

キリの良い数値で何か違和感が・・?

 

こういう事はあまり考えないようにしよう。学者ではないので。

 

 

素直に光速の「数値」「単位」を絶対に覚えておこう。

 

3×10⁸(m/s)

 

※問題文に与えられていないこともあるから注意だ

 

E=mc²の2乗を忘れる

公式の暗記が苦手な人の特徴として

 

「部分的に忘れる」

 

がある。

 

自分も決して、暗記が得意ではなかった。それは自覚している。

 

 

何故なら、中学校1年生の入学時に行われる「おむかえテスト」でクラスの半分くらいの順位だったからだ。

 

一生懸命頑張っていたにも関わらず。塾にも行っていたので、地頭は良くないことを自覚している。

 

 

初学者の中には、下記のような疑問を持つ人がいるのではないだろうか??

 

 

質量欠損のエネルギー関係式って、何故に光速を2乗しないといけないのか

 

こういう疑問にはちゃんと向き合うと良い。

 

 

自分なりの納得があると、公式を忘れにくくなる。

 

 

自分は興味があったので、この式の経緯を調べることにした。

 

 

 

この関係式はアインシュタインが発見したとされていることをご存じだろうか??

 

自分は「アインシュタイン」を調べたのである。ここでは詳細を割愛するが

 

 

アインシュタイン氏は

 

原子(正確には原子核)を研究していて、原子の質量欠損にはもの凄いエネルギーが存在することを突き止めたのだ。(核力や結合エネルギーという話に繋がる)

 

小さな質量でも、ものすごく大きなエネルギーとなる。そのエネルギー値は質量欠損量に光速の二乗の積に相当すると結論づけたわけだ。

 

 

色々調べていくうちに

光速の1乗以上に、強いエネルギーが発生するということを学んだ。

 

 

こうして、経緯を知った上で公式を理解したら、もう2乗は忘れないはずだ。苦手な公式を覚えたい場合には深堀しておくと良い。

 

4.原子炉の形式を知ろう

2011年の東日本大震災をきっかけに原子力発電は一気に有名になった。

 

 

原子炉建屋の天井が吹っ飛んだシーンは何度もニュースで放映されていたので、記憶に残っている人は多いだろう。電源を失い、冷却能力を失った原子力発電がどうなるかが分かってしまった。そこで沢山調べた人もいるだろう。

 

 

その中で、形式が一つ話題になった。

 

今後、試験でも狙われやすいと思うので、押さえておこう。(逆に、安全を5重の壁等、安全に関する話は出題されないだろう)

 

 

・軽水炉タイプ

・ガス冷却タイプ

・重水炉タイプ

・高速増殖炉タイプ

 

といった4つのタイプだ。

 

それぞれの特徴を押さえておこう。

 

軽水炉タイプ(BWRとPWR)

軽水炉という言葉の通り、「軽水」を使用するのがこのタイプの特徴だ。

 

 

軽水という言葉は聞きなれない言葉だと思うが、綺麗な水だ。脱塩水のことである。

 

 

この軽水(脱塩水)について、勘違いしがちなのだが、何に使うか想像つくだろうか??

 

軽水は「燃料の冷却」と「中性子の減速」の役割を担う

 

 

原子炉の中にある燃料体を冷却しつつ、核分裂から発生した中性子を減速させて核分裂を発生しやすい環境作りに貢献しているのだ。

 

 

ここで、軽水炉にはさらに2つの形式があることを伝えておく。

 

・沸騰水型原子炉

・加圧水型原子炉

 

である。

 

簡単な系統図を一度見ておいた方が良い。決定的な違いに気が付いて欲しい。

 

 

❑沸騰水型原子炉(BWR)❑

沸騰水型原子炉 - Wikipedia

 

❑参考URL❑

沸騰水型原子炉 - Wikipedia

 

 

❑加圧水型原子炉(PWR)❑

加圧水型原子力発電所|原子力運転サポートセンター|関西電力

 

❑参考URL❑

加圧水型原子力発電所|原子力運転サポートセンター|関西電力

 

両者の決定的な違い

決定的な違いは2つある。

 

①「蒸気発生器があるか否か」

②「ホウ酸濃度で出力調整するか否か」

 

だ。

 

①「蒸気発生器があるか否か」

タービンで仕事した蒸気は水として運搬する為に冷却される。再び過熱されて蒸気となる。という原則に違いはない。だが「原子炉から直接蒸気をタービンに運ぶ」と「原子炉格納容器内で熱交換した蒸気をタービンに運ぶ」だと話が大きく違ってくる。

 

つまり何が言いたいかというと、放射線物質を含んでいるかという違いがある。ということ。BWRプラントで蒸気配管から蒸気が漏れた場合には大変なことになるのは言うまでもない。

 

 

時間がある人は、下記の日本原子力機構の論文も読んでみると良いだろう。書いている内容は難しい部分もあるが、ポイントだけ摘まんで読むと勉強になる。

 

図も綺麗だ。

 

「環境サイドから見た腐食防食技術の課題と展望」

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jcorr/63/4/63_193/_pdf

 

 

②「ホウ酸濃度で出力調整するか否か」

後述するが、PWRとBWRでは特性に違いがある。

 

BWRには「ボイド効果」「ドップラー効果」という自己制御性があるので、細かい調整は再循環流量を変えるだけで出力を変えることができる。

 

BWRは

・制御棒挿入引抜

・再循環ポンプの流量調整

 

一方で、PWR。

原子炉の冷却水は約15MPaという高圧力になっている。ボイド効果が発生しない。

 

PWRは

・制御棒挿入引抜

・ホウ酸濃度調整

 

そのため、ホウ酸濃度を変えて、核分裂数を調整する。原子炉水のPHを調整するために水酸化リチウムを入れたりしている。

 

 

 

「BWRプラントの方がポンプの流量変えて出力コントロールできる」ので簡単であることを感覚的に感じることができるだろう。

 

ガス冷却タイプ

ガス冷却タイプには大きく分けて、3つのタイプがあることを知っておこう。

 

1.天然ウランガス冷却炉

2.改良型ガス冷却炉

3.高温ガス炉

 

東日本大震災で原子力発電所が「電源喪失(完全ブラックアウト)」「冷却能力の完全喪失」「炉内の水位監視不可」そして「水素爆発」に至った状況から鑑みても、原子力関係の王道から外れた部分を問う問題が出題される可能性は低いだろう。

 

だが、エンジニアの一般常識と知っておくと同時に

 

マイナーな部分から出題された時の電験の問題は総じて「簡単」であることを認識しておこう。点の取りこぼしがないようにしよう。

 

1.天然ウランガス冷却炉

 

wikipediaの画像(マグノックス炉 - Wikipedia)が何だかんだ一番分かりやすかった。こういうあまり過去に出題されていない分野は「ポイント」を押さえると良い。

 

まず、熱源となる燃料は

天然ウランの金属を棒状にしたもの

 

そのままでは脆いので

マグネシウム合金で被覆

 

減速材には

黒鉛

 

そして、冷却材は

炭酸ガス

 

天然ウランガス冷却炉は別名「マグノックス炉」とも呼ばれる。

 

仕組みとしては「炭酸ガス」を加熱して、熱交換器で水にエネルギーを渡すといったものだ。

 

≪参考≫
天然ウランガス冷却炉は、ガスを冷却材としているため、熱容量、熱伝達率が悪い。(密度が低い為)熱出力密度が低いので、ガス圧を上げないといけないし、大型になってしまうという欠点があった。効率が良くないため、燃料交換が頻繁に必要となるネックもある。
この炉を基に他の原子力発電が実用化されていった。

  

2.改良型ガス冷却炉

改良型ガス冷却炉は「天然ウランガス冷却炉」と改良したものだ。

 

何が違うかというと

 

まず燃料が違う。

出力が出やすいような工夫をしてある。

 

ウランを1~2%濃縮した燃料

 ※天然ウランは他の物質も含まれているため、純粋なウランは0.7%と言われている。

 

 

ペレットをステンレス鋼で被覆

 

こういった改良をしたおかげで、炉の温度を650℃、蒸気条件も一般汽力発電水準(16.7MPa、540℃)を満足している。蒸気条件が良くなれば、発電効率が上がる。

 

3.高温ガス炉

何故にこのガス炉が開発されたかを知っておくと良い。「炉心溶融しにくい」というメリットがある。制御棒が入らない事故が起こったとしても、暴走して燃料が溶け落ちるという事象にまで発展しにくい。(今後のエネルギー問題をどうにかするべく、国は動いている。化石燃料を外国から購入している状況を変えないといけない、言い値で買わざるを得ない状況は日本国民にとって、マイナスでしかない事は誰もが勘付いていることだろう)エネルギー関連のニュースを見ていると、2016年に製造実験に成功し、2017年にポーランド、イギリスと高温ガス炉技術協力を進めているニュースがちょこちょこ流れているので、今後もエンジニアとして注視していこう。

 

仕組みの話をしよう。

 

まず、熱源となる燃料は

濃縮ウランとトリウム

 

そのままでは脆いので

黒鉛や炭化ケイ素で被覆

 

 

そして、冷却材は

ヘリウム

 

特記すべき特徴としては

・黒鉛は温度上昇により「中性子吸収能力が高まる」という特性があること

 

・水を使用しないため、水素爆発が起こらない

 

・ヘリウムは腐食性がないため、材料の選定が楽

 

・放射化の影響が小さい。単位体積あたりの核分裂量が軽水炉に比べて少ないので、放射化でボロボロになるといったことが起こりにくい。

 

重水炉タイプ

軽水炉タイプと大体仕組みは同じ。

 

最大の違いは「減速材に重水を使用すること」である。

 

通常、水は「H2O」で表記され、質量数は18だ。少し化学の話になるが、Hは1で、Oは16の質量数と定義されている。

 

ところが、同位体という存在を知っているだろうか??水素Hは質量数1以外にも質量数2や3という水素も存在するのだ。

 

≪重水の定義≫

 重水(じゅうすい、heavy water)とは、質量数の大きい同位体の水分子を多く含み、通常の水より比重の大きい水のこと

 

重水は「中性子吸収量が小さい」という特徴がある。つまり、核分裂時に発生する高速中性子を減速させる役割を担う物質として優れているということだ。(軽水炉の水は中性子を減速させる役割を果たすはずが、吸収してしまう)軽水の300分の1。

 

安価な天然ウランを使用できるというメリットもある。

 

 

あと、新型転換炉(ふげん)という炉をご存じだろうか??

 

自分は原子力屋ではないので、論文を読んだ程度の知識だが、ここは知っておいた方が良いだろう。

 

日本で開発した原子炉がある。それが「ふげん」だ。

 

 

押さえておくべき特徴としては

・重水を使用

・燃料は天然ウランとプルトニウム239の混合物、微濃縮ウラン

 

「重水を使用し、さらに燃料を工夫したので軽水炉より効率が良い」と覚えておくと良いだろう。

 

現在は運転が終了し、廃止措置中だ。(1978年から運転し、2003年に原子炉を停止させた。)

 

これからの原子力分野は廃炉ビジネスなんていう言葉も聞くので、安全に解体できるエンジニアが必要になってくるだろう。

 

高速増殖炉タイプ

核分裂から発生する「高速中性子」をそのまま使えるというのが最大の特徴だ。しかも、運転するほど、燃料を生成できるため、ウラン資源を増やしていけるという理論上のメリットがあると考えられていた。

 

メイン燃料には「プルトニウム239と使用済みのウラン238を混ぜた燃料(MOX燃料)」を使用する。始動用にウラン235も少し含まれている。(プルトニウムの核分裂時に放出されるエネルギーはウラン235と同等)

 

また、ブランケットというウラン238の燃料集合体をメイン燃料の周辺に置くのが特徴。下記の図がイメージとして使えるだろう。緑色がブランケットだ。ウラン238は高速中性子を吸収し、プルトニウム239に変わっていくのだ。

 

(画像参照先:高速増殖炉 - Wikipedia

 

 

詳細の系統図を見てみたい方は電気事業連合会のホームページに綺麗にまとまっている。(高速増殖炉 - 原子燃料サイクル | 電気事業連合会

 

 

減速材は必要なく、冷却材には「金属ナトリウム」を使用する。ナトリウムは中性子を減速、吸収しにくい物質だ。

 

 

技術的な問題が浮かび上がってきたので、現在は運転停止している。ここはエンジニアとして、知っておこう。電験としてはポイントで出題される可能性はある。

 

冷却材である金属ナトリウムの管理が難しい。金属ナトリウムは水や酸素に触れると高温を放って激しく酸化する。その取り扱いには極めて難度の高い技術と、その技術を維持管理する持続可能な運用システムが必要不可欠。

高速増殖炉「もんじゅ」の配管からの金属ナトリウム漏出火災事故は有名だ。
 技術的な問題を解決できずに2016年に廃炉が決定した。この金属ナトリウムの扱いが難しいので、その処置の対応が着目されている。

 

 

参考までに「核燃料サイクル」という言葉も押さえておこう。

聞いた事があると思うが、軽水炉で使用した燃料を加工し、もんじゅのような高速増殖炉で再利用するという計画。最初こそ軽水炉の燃料は輸入するが、高速増殖炉が沢山増えれば、国内で自前で燃料を確保することができるといったもの。

 

5.2つの効果を知ろう

「ボイド効果」「ドップラー効果」の2つは絶対に覚えておこう。内容としては簡単だ。

 

泡のせいで、中性子の減速が起こりにくくなるのが「ボイド効果」だ。

 

 

 

炉水の温度上昇で、ウラン238が中性子吸収しやすくなり、ウラン235の核分裂数が減る現象が「ドップラー効果」だ。

 

 

6.原子力発電と火力発電との違い

・原子力発電はタービン入口蒸気条件が火力と比較して悪いため、同じ出力を得るのに約2倍の蒸気量が必要となる

 

・原子力発電用高圧タービンの方が、火力発電用高圧タービンより回転数が低い

 

・蒸気量が多いため、排気断面積が必要になることから低圧タービンの最終段の動翼の長さが長い

 

・湿分の影響も受けやすいので、翼の先端の周速度を減らす必要があり、回転数が1800,1500rpm

 

・蒸気量が多いので、復水器の冷却水量を多く確保する必要がある。

 

 

要点だけを絞り込むと、ここまで完結に絞り込むことはできる。覚えるときは、極限まで情報を削ると記憶に残りやすい。

 

 

過去問の紹介

原子力発電の問題で気を付けておかないといけないのは「計算問題」だ。しかし、数パターンしかないので、しっかりと押さえておけば恐れることはない。

 

H29問4 原子力発電の電力による揚水発電問題

【問題文】
原子力発電に用いられる M [g] のウラン 235 を核分裂させたときに発生するエネルギーを考える。ここで想定する原子力発電所では,上記エネルギーの 30  を電力量として取り出すことができるものとし、この電力量をすべて使用して,揚水式発電所で揚水できた水量は 90 000 m3 であった。このときの M の値 [g] として,最も近い値を次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。
ただし,揚水式発電所の揚程は 240 m ,揚水時の電動機とポンプの総合効率は 84  とする。また,原子力発電所から揚水式発電所への送電で生じる損失は無視できるものとする。
なお,計算には必要に応じて次の数値を用いること。
・核分裂時のウラン 235 の質量欠損 0.09  
・ウランの原子番号 92 
・真空中の光の速度 3.0×108 m/s 

 

(1)0.9 (2)3.1 (3)7.3 (4)8.7  (5)10.4

 

【解説】

原子力発電と揚水発電の組み合わせは王道中の王道。

「 ウランをいくら使用したか」もしくは「揚水できる水量はいくらか」といった「数個の数式中のどこかがブランクとなっただけの問題」である。

 

【回答】

求めるべき値は「使用するウラン量(g)」だ。

答えを見つける糸口は「質量欠損」と推測するしかない。まずは質量欠損の式を書き出して解いてみよう。重さ繋がりで算出できそうな気がする。

 

☑質量欠損とエネルギーの関係式

「E=Δmc²」

 

E:エネルギー[J]
m:質量欠損[kg]
C:光速[m/s]

 

今回使用するウラン量はM(g)だ。

公式に当てはめる為にはkgに直そう。

 

M/1000 (kg)

 

質量欠損0.09%と与えられている。(意味としては、今回使用するウラン量のうち、0.09%は質量欠損してしまうよ という意味である。)

 

式に直すと

 

M/1000 (kg) ×0.09%

 

パーセントの計算は0.09のまま掛け算してはダメ。0.09/100 にする必要がある。百分率だから。(久しぶりだと、小学生で習うことだが忘れてしまう。)

 

M/1000 (kg) ×0.09/100・・①

 

E=①×c² が原子力発電所の出力ということだ。

 

 

「この出力から30%取り出して揚水発電所で揚水する」というのがこの問題の鍵となる部分。

 

E=Δmc² ×30/100

  =(M/1000)×(0.09/100)×c²

  =(M/1000)×(0.09/100)×(3.8×10⁸)²

  =2.43×10¹⁰M [J]

 

この式で、使用するウラン量を入れてやれば、発生する電力量が求まる。

 

 

一方で、揚水発電側を考えてみよう。「90000m³の水をくみ上げる」と言っているので、式を立てると必要な電力量が算出できるのは分かる。

☑揚水運転時の必要動力Pの式

「P=9.8QH/η」

 

 P:動力[kW]
Q:流量[m³/s]
H:揚程[m]
η:電動機とポンプの総合効率[%](84%なので0.84)

 

この問題では、揚水できた水量が与えられている。(90000m³ )

 

Qは流量なので、水量をt(時間)で割ってあげる必要がある。与えられた数値を入れると・・・

 

P=9.8×(90000/t)×240/0.84

 

必要電力量は下記の公式だ。(90000m³ をくみ上げる為にトータルでかかる電力量を求めるという意)

W=P×t

 

従って、tは打ち消されるので

W=2.52×10⁸ [kw]

 

90000m³ をくみ上げる為に必要な電力量が求まった。

 

E=2.43×10¹⁰M [J] に入れ込めば、必要なウラン量が求まる。(単位が違うことに注意。)

 

2.52×10⁸=2.43×10⁷M

 

M=10.4[g]

 

よって、答えは(5)だ。

 

※要望があれば、他のパターンも追加する。

公式を押さえて、どこをブランクにされているかを意識していけば解けるだろう。

 

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